あたらしい世界
この大学の大きな吹奏楽団に所属してはいない。小ぢんまりとした室内楽“クロス☆音々”というサークルに所属している。


アットホームで、人間関係もよくて、すごく楽しい。

うちの学校の大きな吹奏楽団――毎年夏の吹奏楽コンクールに向けて熱を入れているバンドは、高校の部活までで充分。


コンクールなんて、人間関係がイガイガする。足をひっぱったりひっぱられたりして。


音楽を純粋に楽しめないよ。


まあ、技術の向上とか、目標があるのは悪いことじゃあないけれど。


とりあえず“クロス☆音々”に集まっている輩は、私と同じような見解で集まってきているのだ。


「今日、部会だよね」


「ああ、17時からだっけ」


「そのあと飲み会だぜYeah!」


私は拳を高らかに突き上げた。


サークルで、テスト打ち上げ飲み会が予定されていた。


「Yeah!」


睦緒も同じようにゲンコツを突き上げた。


そして睦緒はその拳を私の拳にごつんとぶつけて言った。


「飲むぜー」


「飲むよー」


「今から飲むぞー」


「うおぉい」


睦緒はコケてみせた。


「まだ午前中だぜ」


私たちは講義棟の前で話をしていたところ、ふと声がした。


「もえぎに睦緒じゃん」


振り向くとそこには聖二がいた。


水軍聖二――彼も私たちと同じ学年のフルート吹きだ。


背がすらっと高くて、肌色は透けるような白さ。


ほどよい天然パーマを栗色に染めて、ぱっと見外国人だ。
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