SleepingBeauti
帰宅して、のぞみは台所に向かう。

マグカップを二つもって来た。

みたことのないマグカップを前にぼくは言った「どうしたの?」

「砂糖多めのミルクティー」と答えるのぞみ。

一口飲むと甘さが体に溶け込むのがわかる。

それから質問を言い直す「このマグカップどうしたの?」

「店長さんがくれたの」

「どうして?」

「ペアだから、あげるってくれたの」と答える。

「ふーん」とぼくは言い、ミルクティーを眺める。

「店長さん、優しいでしょ」とのぞみが言った。

「うん、優しい」そう答えながらも、本当に優しいのは、のぞみだと思った。

ぼくは知らず知らずに微笑んでいたのかもしれない。

「優しい表情になった」と、ホッとしたように言ったのぞみの言葉からして。

ぼくは、のぞみの優しさに心が癒されていた。

やましい心も醜い心も、すべて包みこんでくれる優しい心に癒されて、安らいだ。
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