SleepingBeauti
引越しは一時間とかからなかった。

隣に越すだけなのだから、たいしてかかるとは、思っていなかったけど、あまりにもあっけなかった。

「これで、全部」そう言ったのぞみはどこか寂しそうだった。

寂しそうに見えたのもつかの間だった。

のぞみにとって新居につくと、ハンガーを全部占領して、六畳の部屋に服をかけはじめた。

「タバコはこの部屋では吸わないでね」

「どうして?」

「タバコのヤニがつくでしょ、高いんだからこの服全部」

あっけにとられた。

服買わなかったら、家賃を払えたんじゃないだろうか?

そんなことを考えていたら、のぞみは、ぼくの考えを読みとったように言った。

「文句あるの?」

「ないけど…」

「けど?」

「なんでもない」
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