渇望
第一章-欲望-

泡沫の如く

暮れゆく街の中で、雑踏に紛れながら、今日もまた夜が来るのだと知る。


まるでそれは無限のループのように、終わりない人の営みのよう。


姿を見せ始めた月の輝きさえ奪うようなネオンの色を見つめながら、あたしごと覆い尽くしてくれればと願う。


どうしてそれでもまだ、生きているのだろう。


こんな世界からあたしひとりが消えたって、それに気付く人さえいないだろうに。


今日も体は、痛みを帯びて軋んでいた。


なのにどうして、壊れてはくれないのだろう。




この街で生きていた。

死んでいるみたいに生きていた。




欲しいものなんて何もなく、だから自分自身を切り売りしていた。


いつか、売りさばいているうちに、あたし自身が消えてくれることを願っていたのに。


なのに当然のように、残るのは痛みだけ。


当たり前にやってくる朝も、果てしなく長い夜も、不必要な体と共に持て余す。


手に入るのは、ただの紙切れ。




お金は欲しい。

それは至極当然のこと。




得れば失う、なんて人は言うけど、じゃああたしが失ったものは何だったろう。


まばゆいほどに輝く街の明かりを見つめながら、吐き出した吐息は孤独に溶けた。


どうして人は、と思うことは、愚問なのだろうか。


蓄積されすぎた痛みに蝕まれてしまいそうで、だから夜は少し怖い。

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