渇望

クリスマス

本日、クリスマス・イブ。


仕事を終えて事務所へと戻ってみれば、真綾が折り紙で作った輪っかで飾り付けをしていて、ぎょっとした。


詩音さんはまるで保護者のように、それを眺めて笑っている。



「ちょっとちょっと、何の騒ぎ?」


「あ、百合りんお疲れさん!」


目を輝かせ、真綾は近寄ってくる。



「今日はイブやん?
やからみんなでパーティーしようと思ってな!」


ほら、と言って見せられたのは、お菓子やらジュースやらを買い込んだ袋。


ここで騒ぐつもりなのだろうかと、あたしは口元を引き攣らせてしまうのだが。



「百合りんも予定ないんやったら参加せぇへん?」


確かに、予定なんてないけども。



「詩音さん、良いんですか?」


思わずいぶかしげに振り返ると、



「良いんじゃないかな、たまには。
あたしは片付けと戸締りさえしてくれれば、ここで何やってても気にしないから。」


興味がない、の間違いだろう。


返答に肩をすくめると、真綾に飾り付けの道具を押し付けられた。



「じゃあみんな、楽しんでね。」


お疲れ様、なんて言葉を残し、彼女はさっさと出ていってしまう。


ジローはやっぱり表情を変えることなく、その後ろを続いて事務所を後にした。


まぁ、真綾の意気込んだ顔を見ては、断ることも出来ないだろうとあたしは、仕方がなくも輪に混ざる。

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