渇望

孤独の連鎖

瑠衣に抱き締められて眠り、昼も過ぎた頃に起きてあたしは、家に帰った。


結局あたし達は、携帯番号のひとつも知らないまま別れたのだ。


聞かれなかったし、聞く気もなかった、というだけのことだけど。


それからシャワーを浴びて着替え、タクシーを拾って、適当にメールを打ちながらあたしが向かうのは、別のマンション。


その一室の前に立ち、チャイムを押すと、少ししてドアが開いた。



「あぁ、百合か。」


顔を覗かせたのは、香織。


あたしと同い年で、同じ仕事をしていて仲良くなった。


彼女は大学生で、親から生活費の他にひとり暮らしの家賃まで貰っているくせに、学校なんてまともに行っていないので、親不幸だとは思うけど。



「てか、お腹空いたし。」


「アンタ、人の顔見て開口一番がそれ?」


と、言いながら笑い、「まぁ、入れば?」なんて彼女は言う。


けれどもあたしは、それを聞くより先に靴を脱いでいて、部屋に入って早々に、勝手に冷蔵庫を漁った。


あんぱんはこんなところに入れるもんじゃないと、いつも思うけど。



「これ貰うねー。」


ワンルームでベッドに背をつけ、適当にテレビを見ながらそれを頬張った。


カーテンがはためき、風が舞う。


もう秋なのにこの部屋は、いつも窓が開いている。


その理由を知っているからこそあたしは、聞こえないように舌打ちを混じらせた。



「あ、昨日あたしの電話無視して、何してたの?」


香織はワイドショーよりあたしの素行が気になったようで、笑いながら聞いて来る。

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