渇望
そんな日々も、一年と経たないうちに綻びが見え始める。


高岡が借金をしていたという事実。


毎夜酒を飲んで遅くに帰ってきているのは知っていたけれど、まさかギャンブルまでしていたなんて。


母が夜な夜な泣いていた。



「祥子、向こう行こう。」


いつしか祥子と手を繋いでそんな会話に耳を塞ぎ、ふたり自然と寄り添うようになっていた。


血の繋がりなんかない。


でも、一番近くにいて、唯一全てを曝け出せていた存在だった。


母は昼間の仕事に加えて夜のパートにも出るようになり、家ではほとんど子供だけでいる時間が増えた。


お金のこととか、夫婦のこととか、そういう難しいことはわからない。


けれど、夜中に電気を消し、祥子とふたりで星を見たりして、その大半の時間を埋めていた。



「瑠衣がお兄ちゃんで良かった。」


「俺も祥子が妹で良かったよ。」


それ以上は望まなかった。


ただ、一緒にいることで幸せを感じられ、繋ぐ手のあたたかさにどれほど救われていただろう。


月明かりに照らされた彼女の横顔が一番好きだった。


きっと何時間だってそれを眺めていられただろうし、そこには恋愛感情以上のものがあったとも思う。



「大好きだよ、瑠衣。」


くすぐったくて、でも嬉しかった。


祥子がいるなら、これから何が起ころうと大丈夫だと思えたし、この手を離すことはないとも思っていた。


それは幼いなりの愛だったのだと、今では思う。

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