渇望
この嘘だらけの街にいて、唯一絶対的なものはお金だ。


将来を考えてせせこましく生きるなんてガラじゃなくて、だからあたしは身を切るようにして手に入れたお金だけを信じていた。


あたしはきっと、人よりずっと大金を手にしている。


それはとても楽なことだとは思わないけど、でも、だからこそ信じられるもの。



「んじゃあ、俺らと同じだね!」


あははっ、と笑うアキトと、目を細めてあたしを見る瑠衣。



「俺らもさ、金しか愛してないから!」


笑いながら、アキトはひどく冷たい言葉を落とした。


例えばビールが好きだと笑顔を零すのと同じ顔で、彼は嬉しそうに言う。



「こんな世界、くだらないよね。」


瑠衣は相変わらず聞いてもいないような素振りで煙草を咥えていて、だからまるで、それさえ普通のことのよう。


けれどもお金が好きだと胸を張る人には、むしろ好感さえ持てる。


偽善的な言葉を並べて愛だの恋だのと言うよりずっと、素直な言葉だと思うから。



「じゃあアンタ、何のために生きてんの?」


「復讐するためだよ。」


アキトは言った。


貼り付けた笑顔の奥の瞳は、瑠衣のそれよりずっと冷たく見える。



「殺してやりたいほど憎んでるヤツがいんの。」


復讐を糧にしてでも、それは生きる気力に繋がる。


誰かを恨み続けることほど心をすり減らすことはなくて、だからただ単純に、アキトをすごいと思った。


だってあたしには、生きる理由がないから。

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