渇望
「いちいち癪に障る女ね。」


そりゃアンタの方でしょ、なんてことはさすがに言わないけれど。


でも、お互いがお互いのことを邪魔な存在だと思ってるだけに、どちらからともなく敵意を剥き出しにさせてしまう。



「瑠衣はどこ?」


もう一度聞いてきた彼女に、



「関係ないって言いませんでした?」


あたしも同じ言葉を投げ返した。


どうしてあたしが、瑠衣の捲いた種の所為で迷惑を被らなくてはならないのか。


そう思うと、余計に苛立ってくる自分がいる。



「その辺のパンピーな女が調子に乗らないでちょうだい。」


「飲み屋で働いてたらそんなに偉いんですか?
あなただって所詮、瑠衣から見れば他の女と変わりなく映ってると思いますけど。」


何ですって?


そう言った彼女は、ツカツカとこちらへと歩み寄って来て、平手を振り上げた。


瞬間、辺りに響く乾いた音。


疼く頬の痛みと怒りで、あたしは拳を握り締め、アミさんの胸ぐらを掴み上げた。



「ふざけんなよ、調子に乗ってんのはアンタの方だろうが!
捨てられたヤツのくせに未練がましいんだよ、消えろって言ってんだろ!」


一度口から洩れた言葉は、堰き止められない。


それはまるで、くだらないことに振り回されている滑稽な自分自身に言っているかのように、あたしはたたみ掛けるように声を荒げた。



「アンタなんか結局は、あの人の代わりでしかないんだよ!」

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