渇望
じゃあ瑠衣は、“アイツ”を探すために、この街で生きているということだろうか。


それが誰かはわからないけれど、でも、ふと脳裏をよぎったのは、彼の古傷。


瑠衣は窓の外へと瞳を滑らせ、まるでどこか遠くを見ているかのよう。



「それがアンタの生きる理由?」


聞くと、彼は自嘲気味に口元を緩めた。


けれども答えを言うことはなく、だからいつも、この人との会話は消化不良でも起こしてしまいそう。



「生きることに理由を求める必要なんて、あんのかな?」


瑠衣は呟き、煙草を咥える。


こんなにも人口密度の高い場所で出会ったあたし達は、それを奇跡と呼ぶべきなのだろうか。


無意味に生きていたあの頃、重ねた傷。


そこに生きる意味を見い出そうとしていたあたしは、愚かなだけだったのかもしれない。



「例えば鳥だってさ、そういうのを探してたかもしれねぇじゃん?
でも、焼き鳥にされちまったわけじゃんか。」


「…だから、何?」


「だから、意志とかそういうのって、結局関係ないんだよ。」


あたし達の存在は、その程度。


どんなに足掻いてみても、所詮は食べられて終わるこの焼き鳥の命と同じ。


そう言いたげな瑠衣の台詞に、何ひとつあたしは、言葉を返すことは出来なかった。



「そんなこと言われたら食べられないんだけど。
てか、ベジタリアンにでもなれって?」


嫌味のように言ってやると、彼は声を上げて笑った。

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