渇望
「雨が降っても、相変わらず汚ない街だよね。」


淀みきった空の色と同じくらい、薄汚い街だと思う。


人の欲望だとか、嘘臭いネオンの色だとか、そんなものにまみれすぎている。


だからそれは、雨水なんかでは到底洗い流すことは出来ないらしい。



「お前、地元ここじゃねぇの?」


「うん。
あたしが生まれ育ったのは、大して何もないとこだから。」


ふうん、と彼は言う。


あたしの悪業なんて有名で、だから地元を離れて以来、戻ることはおろか、一度として連絡さえしていないのだけれど。



「瑠衣は?」


「俺、昔からこの街にいるよ。」


「アキトと一緒に?」


と、聞いてしまい、ヤバかったかな、と思ったけど。



「アイツとは、17くらいからかな。」


そう言って、彼は視線を手元へと落とした。


その瞳は、やっぱりどこか悲しそうで、だからそれ以上は踏み込めない。



「俺だってこんな街は嫌いだけどさ。
でも、ここにいたら見つかるかもしれねぇから。」


テーブルの上には、グラスから滴る水滴が垂れる。


まるでそれは、雨のように、涙のように。



「どうしてももう一度、アイツに会いたいんだ。」

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