渇望

依存心と闇

あの日、瑠衣は明け方にうちにやってきた。


そして、いつもと同じようにあたしを抱き締めて眠っていた。


外国製のボディーソープの香りを漂わせた体で、縛られた痕の残るあたしの体を包んでくれる。


瑠衣は他の女を抱いている。


それでお金を得ているのかもしれないけれど、でも、もっと根本の部分で、何か別の理由がある気がした。


弱い人だから、それが誰であろうと良かったのかもしれないけれど。


セックスをするでもなく、ただ一緒にいた。


利用されている、ということの意味は、まだ知らない。







煌びやかなシャンデリアの下でベロンベロンに酔っ払ってる香織を横目に、のん気なものだな、と呆れ返ることしか出来ない。



「香織、ほら、まだ飲めるだろ?」


流星は、そう言って彼女のグラスにさらに酒を注いだ。


こんな男がどうしてナンバーワンなのかと、いつも思う。


客に飲ませ、次から次にボトルを空けさせるのが流星のやり口で、本当のところは、大して話が上手いわけでもないのだから。


それに怒った客には、今度は色枕。


でも、このふたりはこうやって、もう一年以上も関係が続いている。


ろくでなし同士、これはこれでお似合いなのかもしれないけれど。


香織はめちゃくちゃ太い客でもないが、それでも流星は、ある意味では彼女を大切に思っているのかもしれない。



「先週、地元帰ったんだ。」


ジュンが言った。


そして差し出してくれたのは、饅頭ひとつ。



「お土産。」


うちの地元の名物は、ひよこ饅頭ではないはずだけど。


どこの駅で買ってきたのか知らないが、でも笑いながらあたしは、ありがとう、と受け取った。

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