【短編】優しさなんていらないの



彼氏なのは俺なのに。
俺以上に自信に満ちてる……。


すると外を眺めながらそいつは口を開いた。


「知ってますか?先輩」


そう言ってまた俺を見つめる。


「優しい人って好かれますけど……。誰にでも優しい人は嫌われますよ?」


「え?」


「彼女と他の女を区別しないと駄目ですよ。彼女ってのは特別な枠なんです。特別と友達への優しさはまた別なんです」


俯いている俺は顔を上げて、そいつを見るとそいつは俺に背を向けて歩き出した。


「先輩はそれを一緒にしてしまった。その誰にでも優しいって事に柚未は不安を抱えてたのに、気付いてあげなかった」


胸が痛くなる……。


「先輩……。誰にでも優しい、ほど。不安にさせるものはないんですよ」


言葉の1つ1つが俺の胸を突き刺す。
去って行くそいつの背中を見つめたまま、俺は動けなかった。


そうか……。
俺が親切心でやって来た事は。
少しずつ柚未を不安にさせていたんだ。


今頃気付くなんて……。
後輩に言われて気付くなんて……。


「やっぱ……俺駄目だな」


俺はその場にしゃがみ込んだ。


ようやく分かった……。


俺だって、柚未が誰にでも優しかったら嫌だもん。
特別でいたいって思うもん。
何でそれを気付かなかったんだろう。


今からなら……。
間に合うかもしれない。


俺はゆっくりと立ち上がった。
柚未のとこへ……。
行こう、気持ちを伝えに。



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