ビタースイート・キス
ちゃんとしたキスだって、それ以上だって経験済みだけれど。

たかが間接キスだけで、あたしをこんなにドキドキさせちゃう先生は狡い。

躊躇(ためら)う事なく、スマートにやってのける先生が憎い。


それを言葉にしてしまったら、また「ガキ」だって言わるのだろう。
あたしはそれが嫌で、口を噤(つぐ)む。

他の誰より、先生からの線引きは聞きたくなかった。


「しっかし軽いな。これ何ミリだ?」

「…………」

二、三口吸い込んだ先生はフィルター近くまで燃えた煙草を揉み消す。

あたしが返事をしないでいると、芝生の上に放置されたままの箱を手に取り、

「げ。1ミリかよ。こんな軽いの、吸った気がしねぇな」

眉間に皺を寄せ、突っ込んだままだった左手のポケットから自分の煙草を取り出す。
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