ビタースイート・キス
先生はあたしの目線に合わせてしゃがむと、スラックスのポケットから出した右手を伸ばし、あたしが啣える煙草を口から抜き去って――。

「あ、」

「あ?」

躊躇(ためら)う事なく短くなっていたそれを、自分の唇に挟んだ。


……ほら、ね。
やっぱり、

「オトナは狡(ずる)いよ……」

ドキドキさせるような事を簡単にやってのける。
――期待させるような事を。


「何いじけてんだよ?」

「センセーが狡いからいけない」

「あぁ?」

だって――それって間接キス、じゃないか。

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