ビタースイート・キス
だから、あたしはそれ以外の理由を述べるしかなく、

「……時間を買ってんの」

恐らくは到底理解し難いであろう持論を漏らすと、先生はそれに興味を示したらしく、

「時間を、買う?」

あたしの言葉を真似て、その先を促す。


あたしは伝える言葉を整理しようと、「んー」少し考えてから口を開いた。


「煙草ってさ、一本吸い終わるまで五分くらいじゃん? で、一箱……まぁ、400円として。吸っている時間があたしには休息になるから、あたしは400円で一時間分の休らぎを買ってんの」

一箱20本入り、一本に要する時間は約五分。

単純計算でおよそ百分を400円で買うあたしは、算数よりも余程単純な人間で、それこそガキの一言で一蹴されてもおかしくはない。


だけど、先生はそれを黙って聞いてくれて、
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