まほろば【古代編】
「トヨ、大丈夫?」

トヨの体に温もりが戻り始めた頃、やっとそう声をかけることができた。

「うん、ありがとうアキ」

トヨは、顔を上げていつもの笑顔を見せてくれた。

その笑顔を見れたことで、いつもの二人に戻れた気がした。

「トヨ、抜け出すの大変だったんじゃないか?」

アオの言葉を借りれば、トヨは最近何かと忙しい身のようだったので、その分他の人の目もいつも以上に多かったはずだ。

「ううん、そんなことない。大丈夫だよ」

「そうか……」

トヨはこちらに心配かけまいとして何でもないような顔をしているが、その顔には隠せない疲労の影がちらついていた。
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