【完】最後のバレンタインチョコ
だけど、そんなに大好きでも終わりは来た。


俺が東京の大学に進学するとともに、沙耶との関係は疎遠になり、いつしか二人の気持ちは離れていった。


もっと沙耶に優しくしてやれば良かったって今でも後悔してる。


あの時の俺は音楽っていう新しい事に出会って、ミュージシャンになりたいって本気で夢見てて……

沙耶から携帯にメールが来ても返信しないことがざらにあった。



「沙耶、ごめん。
俺今、沙耶のことより夢の方が大事なんだ。
だから……」



「んだが。
分がった。頑張れ。
わはこっちで頑張るがら」



俺が全てを言い終わるまえに沙耶はそう俺に伝えた。


電話越しに聞こえる声が少し震えていた。

泣いてる。
沙耶泣いてる……

ごめんな、ごめん……



そうして俺たちは別れた。

けど、別れた後も沙耶からは毎年煎餅耳チョコが届いた。



「別れたんじゃないのかよ……」

とは言ってるけど内心はすごく嬉しかった。

だって嫌いで別れたわけじゃないから。


この煎餅耳チョコが送られ続けている限りは、沙耶は俺の事好きでいてくれるって信じてたから。

いつか夢が叶ったら、また……


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