bitter sweet mind

 ミルクパン程度の大きさの容器の中は甘い甘いセピアの湖。

 あ、ミルクパンって、初めて聞いたときミルククリームが入ったパンだと思ってたのよね。

 実際は長柄のついたちっちゃなお鍋みたいなもので。

 要するに、ミルクを沸かすフライパンってこと。

 おっと脱線。

 で、そのとろとろのチョコレートの中へ専用の細長いフォークに刺したイチゴをつけて――


  くるり


 とすれば、ほら出来上がり。

「はい、草太。あ~ん」

「おっ? おぉっ!?」

 豆を投げつけられた鳩みたいにきょとん、とする草太。

「今日は特別、大サービス。ほら、あ~ん」

「俺、明日死ぬのかな」

「バカいってないで。腕が疲れちゃうから。は・や・く」

「お、おぉ。あ、あ~ん」

 ぱくん、とひと口で消えるイチゴ。

「どう?」

 まぁ、どうもなにも失敗しようがないから味は間違いないんだけどね。

 と、思ったら、

「ん。うまい……けども――」

 あれ?

「“ヘタ”は取っておいてくれるとなおうまい」

「わっ。ご、ごめん!」

 うぅ……どこまでもつめが甘いなぁ、わたし。

 でも草太はやさしく笑って、

「ま、つっても今まで食べた菓子の中じゃダントツ1位だけどな」

 まったくもう。

 キザなんだから。

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