bitter sweet mind
「困ったなぁ……」
夕方で人通りが増え始めた駅前通りをひとり肩を落とし歩くわたし。
結局あの後何度か作り直してはみたものの、どれもオブジェ以外の使い道がなく。
「はぁ……」
どうしてわたしってこんなに不器用なのかしら。
草太みたいに何でも作れるようになりたいとまでは望まないけれど、せめて、ねぇ?
プレゼント出来る程度のものくらい。
ふと、とぼりとぼりと歩くわたしの視界の端。
そこにはちょうど洋菓子店や女の子向けの雑貨屋などが軒を連ねていて。
その軒先では夕陽に負けないように燦(さん)と輝く真っ赤なラッピングで着飾ったチョコたちが、
「ワタシたちならカレのハートをずっきゅんよ!」
なんていいながらチャーミングに笑いかけてきていて。
思わずふらふら、と吸い寄せられそうになるわたし。
あぁ……。
こんなことなら今朝、手作りチョコをプレゼントするっていう“決意表明”のためにすでに買ってあったやつを食べてしまわなければよかった。
だって、そうでもしないと甘えちゃいそうだったんだもん。
「はぁ……」
でも、やっぱりもう買うしかないよねぇ。
もういち度マスターに教えてもらうにしても、明日は草太が朝からシフトに入っちゃってるし。
もっとも。
ひどくやわらかい微笑みで肩をぽむん、と叩いて、
「キミハヨクヤッタ」
といったマスターがこれ以上付き合ってくれるか、正直自信がない。
ていうか、無理。
申し訳なさすぎる。
「はぁ……」
何度目かのため息をアスファルトにこぼしたわたしは力なく視線を上げ、
「ん?」
ふと、視界に入ってきたあるものに目を留めた。