先生と王子様と演劇部な私。
「じゃぁ、由美ちゃん、帰ろうか。俺、これからデートだし」

 そう言って堀木戸さんは松葉杖を使って立つと、由美ちゃんの手を借りることもなく、ヒョイヒョイと歩き始める。松葉杖に慣れてるっていうのもどうかと思うけど……。


「平、手貸すぞ?」

 舞台から降りようとする朗先生を堀木戸さんが手で止めた。

「いいよ、そんな王子様の格好で外出る気?」

 そう言われて朗先生は自分の服を見ると、それもそうだな、と言って舞台から降りようとするのを諦めた。


「由美ちゃんも、赤ちゃん待ってるよ~。それに、うちら居たら邪魔だよ」

 イヒヒ、と堀木戸さんが意地悪そうに笑うと、由美ちゃんも、そうか、と意地悪そうに笑いながらと席を立つ。


「佐々木くん、卒業までは手、出さないようにね?」


 ゆ、由美ちゃん、それ、どういう意味ですかっ。


「チッ」

 朗先生はなぜか悔しそうに舌打ちをすると、早く帰れと二人を追い払った。

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