先生と王子様と演劇部な私。
「……なんだ?」

「今日、王子様をやることになったのは、いつから決まってたの? 堀木戸さんは自分がやるつもりだったんだよね?」


 さっきまでの、赤らんだ顔はもうなくなっている。

 心の中で、チッ、と舌打をした。あーもー、俺、今完全に教師じゃねぇや。


「言われたのは……柚子が講堂に入ってくる十分前くらいだ。平に呼び出されて行ってみたら、突然言われたよ」


 溜め息混じりに言うと、柚子は目を丸くした。


「じゃあ、台本とか見てないの?」


「あぁ、見なくても覚えてるから。高三の頃、柚子みたいに台本を何度も読み込んだのさ」


 そう言うと柚子は、あ、と口元を押さえる。
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