ヴァンパイアと人魚姫
「父上。ただいま帰りました。」


父は、大きな椅子に座って俺を見てきた。


「遅かったなエレス。今夜は、帰って来ないのかと思ったぞ?」


力強い目で睨まれ俺は少し怯んだ。

俺らヴァンパイアは、太陽の光に当たると死にはしないが、具合が悪くなってしまうのだ。


「すいません…。少し用事があって。」


「あの人魚のことか?」

低く唸るような声でギロリと睨んできた。

「えっ?」


「とぼけるな。どうせ人魚に会いに行ってたんだろ?」


「はい…人魚に会いに行ってました。」


「何故そんなにあの人魚が気にいっている?」


「気にいっている訳ではありません…」


「なら何故あの人魚とは話をするのだ?お前が話をするのはテッドくらいのはずだろ?」


俺は父に言葉を返すことができず、ただ黙っていた。

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