新月の夜
化学的に親子と証明されても意図的な作為によって作られたものだと言われ、全てを隠されただけ。2人目が生まれても変わらなかった。お互い愛し合っていても寂しい。主人は優しい。出会った頃と変わらない。私が16で、主人が21。」
「え…。」
「私の一目ぼれ。だから息子の暴走くらいわかるわ。人を好きになると大胆になる。息子には私みたくなって欲しくない。だから認めてる。ねぇ。」

母はにっこり麻友美に微笑みかける。

「……。」
「ふふふ。こんなに近くにお兄さんいたのね。かわいい息子いじめないであげてね?」
「…はい。」
「やはり息子はかわいいのよ。親バカ。ナオキさんも相当親バカよ。ふふふ。これからもよろしくね。坂井くん。」


「嘘だろ…。」

兄は呟く。麻友美は、

「本当だよ。あんなに似ているのに。」
「……。」
「お兄ちゃん、私なんか見られたのよ。」
「ふふふ、知られてたみたいだね。」
「…あんなところ。」
「何を見られた?」
「…言ったら怒るくせに。」
「まさか…。」
「ホームパーティーの時にね。お母さんの妊娠が発覚した悠はひどく混乱してたわ。お母さんだもの、お母さんは喜んで欲しかったのに。部屋に行っちゃった。私は説得しようとしたら…。」
「倒されたのだろ。もう受け止める。」
「悠は私に当たった。それを見られたの。」
「最後までいったのか?」
「…いってないわよ。…あと少し落ち着くの遅かったら…。私を襲ってるのに怒らなくて。優しく話して、普通は息子さんだから、襲ってても憎むのかなって。」

兄は麻友美を抱いて、

「聞いたらいけなかったのかな?…優しい先輩だ。まさか…真実を聞いたらそうでしか見れない。」

そこへ、

「あ、姉さんと兄さん。…姉さんひどいね。兄さんと出掛けるなら僕だって誘ってよ。しかもハグハグしてるし。」

祐貴だ。

「お兄ちゃんと話したい事があったの。祐貴、やきもちやいてくれたの?」
「う…うん。」
「祐貴も大好きに決まってるじゃない。」

ぎゅっ。


麻友美の兄は出勤する。

「おはようございます…。」

悠太の母は、

「おはよう。」

こっそり、

「まだ秘密言わないで。口止めされてるから。」
「…はい。」

部署に向かう兄
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