新月の夜
「…うん。」

あつきは史奈をお姫様だっこして、

キス。

「そうだ、今日、土曜日だ。」
「?」


「悠太くん?今日はお母さん休み?」
「土曜日だし、妊婦をそこまで無理させられない。」
「行っていいかな?妻をだ。」
「へ?」
「きっと妊娠してる。お母さんに会わせて、少しでも彼女にできることがあれば。」
「いいですよ。母さんに言っておきます。喜ぶよ。あなたは母さんにとって恩人ですから。」
「ありがとう。」


「あつき?」
「いいから。」

史奈は車に乗せられる。

「仕事でしょ?」
「うん。」
「どこいくの?」
「いいところ。」
「……。」


悠太の家。

「…ここは?」
「そのうちわかるよ。」

ベルを鳴らし、中から悠太が出てくる。

「いらっしゃい。相変わらずお嫁さん美人ですね。結婚式以来でしょうか?」
「…?」
「どうぞ入って下さい。」
「え…でも…。」

奥から悠太の母(8か月くらい)がお腹を重そうに歩いて来る。

「そのコが妊婦さん?かわいいコね。初めまして、次男がお世話になっております。」
「そのお腹!?」
「触ってみる?蹴られるよ。」

史奈は触れてみる。

”ドン!ドン!”

「!?」
「いつものことですよ。元気でしょ?女の子かな?息子2人の時より優しいもの。男は思いきり蹴るから痛いのなんの。…為になるかなぁ。」

史奈に笑顔。

「妊婦仲間って大切だろ?思い当たる妊婦は悠太くんの母親しかいなかった。史奈の役に立ちたい。少しは役に立てたかな?」
「ありがとう。」

抱き着く。

「…あの赤ちゃんがパパなんて、私も年かも。」
「え?」
「オレが0歳の頃に会ってる。」
「あの時は不安で逃げてばかりで旦那から逃げていたわ。赤ちゃんは本当に望まれてる?なんて。当時19だから考えは甘い。」
「じ…19!?」
「旦那には迷惑かけた。って当時は恋人。何も言わずに、妊娠だけ告げていなくなったから。戻ったら旦那さんは事情を知らない周りに殴られるし、素直に伝えていたら。」
「母さん、そろそろ行くよ。」

悠太は言う。

「はい。今日は楽しいわ。ありがとう。」
「じゃあ、行ってくるね。」

あつきは史奈に言う。
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