新月の夜
い。育てたいの。」

母は、

「彼はいくつなの?」
「…同じ年。」
「子供を育てることはどれだけ大変かわかっているのか?麻友はまだ若い。こんな時に子供ができるのは影響あるだろ。」
「……。」
「まずは連れてきなさい。それからだ。認めた訳ではない。堕ろすことも頭に入れておきなさい。」
「……。」
「父さん!姉さんは…。」
「堕ろすのは避けたいよ。でもな、私にも父親なりのプライドがある。見定めさせてもらう。いいかな?」
「…はい。」
「パパは最近、麻友を近くで見ていない。来てはくれないか?」

麻友美は戸惑うが従う。父は麻友美の髪を撫でて、

「かわいいなぁ。…もうくっつけないのか…寂しいな。忘れないで欲しい。娘だから予感はしてたけどこんなに早く来るとは。麻友はずっと私の娘だ。」
「…パパ。」

兄は、

「複雑かな。かわいい妹に手を出したから憎いはずなのに…手を出せないよ。」
「お兄ちゃんのこと尊敬してるよ。お兄ちゃんが殴ってなかったら暴走してたって。会ってあげて?」
「うん。」

安心した麻友美は吐き気をもよおす。祐貴は優しくさする。

「ごめんね、祐貴。」
「うぅん、大丈夫だよ。いつでも言って?」
「うん。」

祐貴は麻友美を部屋に優しく運んで寝かせる。すると携帯が鳴る。

「彼氏からだよ。」


「もしもし?両親には言った。父さんが連れてきなさいって。」
「……。」
「不安?」
「認められる…?大丈夫、麻友は守る。母さんはうきうきしてた。キモチは若い。奈央産んだばかりだし、それに、父さんと母さんラブラブ。…何度となくキスを見てるから。オレのお嫁さんになって欲しい。」

麻友美は泣いて、

「ありがとう…。」

祐貴は電話を代わり、

「姉さんを泣かしましたね。姉さんを頼みます。家に来て?ね、お兄さん。」
「お兄さんなんて…。」
「今更照れるの?姉さんを妊娠させたのは誰?」
「……。」
「案内しますよ。では、姉さんの体調を考慮して切りますね。」
「わかった。」

切る。

「ほらね、かかって来た。」
「…祐貴。」
「多少わがままでもいい人だよね。まあ先に妊娠させたのは許せないけど。」
「……。」
「ゆっくり眠ってね。」
「ねぇ祐貴、絢ちゃん
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