新月の夜
私が言ったの。赤ちゃんを温めて欲しかった。」

悠太は、

「ごめんなさい、着替えます。後ろ向いてて下さい。」


着替える。悠太は膝の上に麻友美を座らせている。

「お兄ちゃん、ごめんなさい…。」

奈央は兄から下り、はいはいして麻友美と悠太を離そうと麻友美を叩く。乗る。麻友美のお腹にどんどん。

「う…お腹が!?」

お腹に痛み。悠太は、

「奈央、やめろ!!」

奈央はぎゃあぎゃあ言う。麻友美はぐてんとする。お腹を押さえて、息は荒い。血も滴る。悠太は麻友美を抱いて、

「奈央、わかっているだろうな?お腹の赤ちゃんを殺しでもしたらいくら妹でも許さない!」

ぷいっ!?

奈央は悠太に甘える。悠太は知らないふり。奈央は甘えて泣く。

「お兄ちゃんの大事な人をいじめない?」

奈央は泣いてこくりと頷く。そして麻友美に甘える。麻友美は、

「はぁ…はぁ…大丈夫よ…ごめんね…大事なお兄ちゃん奪っちゃったね…。いい子ね…ずっとお兄ちゃん好きでいてあげて…私の好きな人…。」

悠太は、

「麻友、無理しないでいい。眠ってるんだ。赤ちゃんに何かあったらどうする?流産させたらオレは麻友のお兄さんに、弟くんに、ご親族に何て説明すればいい?」
「…うん。」
「お腹の赤ちゃんも麻友も愛してる。失いたくない。」
「……。」

悠太は麻友美をベッドに寝かせ、

「麻友、愛してる。照れ隠しのちびっこ、女としか見てなかった。好きで好きでたまらなくて、想うだけで風呂場でのぼせて倒れたり、起きたら大量の男…が出てたり、大学帰りにかわいい髪飾り見つけて、似合うだろうなの衝動で買ったり、路上で歌っていた麻友に少しでも貢ぎたくて、恥ずかしいから変装して1万円を置いて、びっくりして追い掛けて来た麻友から逃げたりした。」

麻友美は、

「あ…あの人…悠なの?捜してた。大金、信じられなくて…。」
「麻友の為ならどれだけ貢いでも構わなかった。会社の株と土地から得た資金。いくらでもよかった。麻友を求めてた。最初に麻友を抱いた時、悩んだ。キオクがない。同意を得ないまま抱いてしまった。しかも避妊していない。生理が来てるか探って、来てたと知った時、抱きしめたいくらい嬉しかった。弓削に嫉妬して無理矢理抱いた夜。家に帰って篭っ
< 224 / 257 >

この作品をシェア

pagetop