新月の夜
た。最低な男だと。もう戻れないと。麻友と付き合って、たくさん嫉妬して、その醜さと葛藤してたけど、麻友の愛が欲しかった。」
「悠…。愛してる、愛してるよ。」

ちゅっ。

兄は一部始終を見ている。

(嫉妬ばかりするひどい男、社長令息と知って逆らえなかったけど、本当は純粋に麻友を愛してる…)

悠太は兄と奈央がいることを思い出し、赤くなる。

「…お兄さん、麻友を少し休ませます。母に言っておいて下さい。落ち着いたら行きます。」
「…麻友の事、本当に好きなのだな。偽りはないな?」
「ありません。」
「わかりました。伝えておくよ、弟よ。」
「え?」
「弟だと言っている。」
「ありがとうございます。」


「なんで言わなかったのよ。」
「…ああ、名乗り出たらやな奴だ。自惚れ男。」
「悠の事好きだもん。」
「ごめん、」

ちゅっ。

「…もぅ。」

悠太は麻友美のお腹を撫でて、

「奈央がいじめてごめん。いい子だ。痛かったろ?どうか死なないで?愛をあげる。待ってる。生まれて来るんだ。」

悠太は麻友美を温める。


「ただいま。」

和也と父が帰って来る。

「頼まれてたもの取って来たよ。」
「ありがとう。並べるわよ。お姉ちゃん達も来るから。」
「悠太は?」

父が聞くと、

「彼女と部屋にいるわ。奈央が嫉妬して彼女のお腹を踏んじゃって…休ませてる。」
「奈央、いかんぞ。」

抱く。奈央は罪悪感。和也は父から奈央を受けて、

「奈央は嫉妬したんだね?悠ちゃんがとられるから。坂井先輩も構うからね。妹さんを可愛がるのは当然だよ。母さんだって溺愛してる。奈央、大丈夫だよ。みんな奈央を捨てる訳ない。奈央はかわいいからね。ほら、笑って?奈央にふてぶてしいカオは似合わない。」

奈央はうるうるする。和也は奈央の額にちょんと指を触れ、

「奈央ちゃん☆」

奈央はにこっ。

「奈央はかわいいなぁ。食べたくなる。」

奈央はびくん!?

「うそぴょん。」

和也はソファーに座る。奈央を膝の上に立たせる。奈央はそっとつかまる。

「いい子だ。つかまり立ち上手くなったね。もうすぐ歩くね。1つになるまでに歩き出したら餅を背負わせないとね。」

奈央は和也の肩から
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