新月の夜
「…いえ。」

あさみは言う。まだ見つめられる。

「…本当についてないかな?」

あさみは男の腕を両手で優しく握り、

「…好き。」
「え?」
「あなたが好きです。」

うるうる。周りは、ざわつく、

「平川が告られてる。」
「ナオキが高校生に!?」

男は焦る。

ざわざわ。

男はあさみの手を繋ぎ、

「…どこか静かな所へ行こうか。」

走る。あさみは幸せ。
しばらくすると姉が戻ってくる。

「あれ?木村くん、あさみは?平川くんもいない。」
「…すごかった。まさかの展開。」
「え?」
「妹ちゃんいきなりナオキに告るんだもん。大好きだって。」
「…冗談うまいね。」
「聞いてみろよ。みんな言うぞ。」
「…嘘よ。」

姉は走る。

「あさみ、あさみ!」

姉は、

「志保、平川くん知らない?」
「平川くんならかわいい女の子と走ってったよ。確か、高校生に告白されたと杉本くんが言ってた。」
「どんなコ?」
「…髪が肩より少し長かったような。かわいい髪どめしてて、黒のワンピースに淡いピンクのカーディガンの女のコ。」

姉は、

「…うそ。」

崩れる。

「美亜、知ってるの?そのコ。」
「…妹。」
「えぇ!?」


あさみは二人きり。

「…ここまで来たら大丈夫だろ。…君、唐突だね。」

あさみは、

「はぁ…はぁ…。」

走って疲れてる。

「…ごめん。息切らせてしまった。」

あさみは男に抱き着き、

「このままいたいです。」

ドキドキ、

心臓の鼓動。伝わってくる。

「このドキドキをあげます。」
「…君は。」
「本気です。子供だから?16だから?私は女です。一人の人として見て下さい。」
「君から見たら21さおじさんだぞ?」
「違います。好きです。」

男は、

「何か食べる?おごるよ。」

あさみは、

「いらない。太る。嫌われたくないの…。」
「…何したい?」
「手を繋いで歩きたい…。」
「わかりました。」

手を繋ぐ。歩く。幸せそうなあさみ。男は癒される。笑顔。時間はすぐに過ぎていく。

「お姉さん待ってるよ。」
「まだいたい。」
「お姉さん心配してる。」
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