オチビな理由


「…あの、オチ…じゃなくて川口サン?聞いてる?」

「………やしい」

「は?」

「メチャクチャ悔しい!!」


 ボカッ!と先輩の胸板を思い切り拳で叩いた。
 あたしのいきなりの突撃にびっくりしたらしい孝太先輩は、盛大にむせた。


「ゲッホゲホッ!オチビ…ェホッ、痛いじゃねーか!!」

「…先輩、国語の成績良くないでしょ?」

「え?!…き、聞くなよ!」

「だからムッチャクチャ悔しい!」


 全然わからなかった自分がくやしい、恥ずかしい。
 劣等感なんて今じゃ嘘みたい。いっぱい誉めてもらった気がするから。
 そっと背中に回された先輩の腕が妙にあったかくて、安心するなんて…また悔しいけど、悪くなかった。




 何て単純なんだろう。
 言葉ひとつでこんなに気が晴れるのは、はじめてだった。




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