オチビな理由


「…知ってると思うけど、俺さ、3人兄弟の末っ子で。歳が離れてる上の兄貴と姉ちゃんに『オチビ』って呼ばれてるんだ。歳が離れてるっていうのもあってすごく可愛がってもらってるし。オチビって言われて嫌な気持ちはしない。小さいころにさ、理由を聞いたことがあったんだ…」




『ねえちゃん!ねえちゃん達は何でおれのこと、オチビって呼ぶの?』

『それはね、孝太のことがかわいいっていう意味なんだよ。兄ちゃんも姉ちゃんも康太を大好きだよっていう証拠。いい子に育ちますようにーってね』




「て、わけで」

「………」

「…あーもう、ここまで言っちまったら言うけど!オチビのこと好きだからそうやって呼んでたんだっ。いや、そりゃ久しぶりに会ってはしゃいだ俺も悪いけど…そんなに迷惑だったら名字の『川口』って呼ぶし…」


 だんだんと愚痴っぽくなってきた先輩の声を、あたしはいつの間にか下を向いて聞いていた。
 思っていたこととはまったく違う話に、思考回路がついていかない。
 ただ、沸々とわき上がってくる感情に、あたしは両の手を握りしめた。



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