治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
ほつれた部分から出た綿毛に、アリスちゃんのコームが引っかかる。
慌てるようにして外したみたいだけど、また同じことを繰り返していた。
「ねえ、良かったら。ウサギさん直してあげようか」
髪をとかし終えてそう言ってみれば、アリスちゃんがびっくりしたようにこちらを向いた。
「お姉ちゃん、治せるの。お医者さんなの」
「まあ、医者ではあるかな。ぬいぐるみの補修ぐらいは出来ると思うよ。
こう見えても家事炊事は小さい頃からやっていてね。縫い物は得意なんだよ」
「アリスはまだ出来ないの」
「いいんだよ、アリスちゃんはまだ小さいんだから」
「でもお姉ちゃんは小さくても出来たんでしょう」
「出来たというよりは、“やらなきゃいけなかった”っていう強制かな。自分の世話をしてくれる人がいなかったからね」