神への挑戦
エースにはもう解っていたのだ。来た時から…。

ここにはもう何も情報がない事を。

一足どころか三足ぐらい遅かったのだ。もうこの工場は、かつて使われていた機能を果たしていない事に。

それはもう、一目瞭然なぐらいにはっきりと見て取れる。

「これじゃ、情報もクソもないな。見た目は普通なのに、肝心の機能が殺されている。足がつかない様にしたのか…」

折角、遠路はるばるここまで来たエースだったが、眼に見えた収穫は何もないに等しかった。

そう…目に見えた情報は。

「さてと…いつまでもこんな場所でうろついてても仕方ないか。そろそろ、ハヤトにもあの組織とは手を引いてもら……おっ?」

エースが独り言を連発している最中に聞こえてきたのは、この場所に向かってくる車の騒音だった。あたりに民家などはないので、明らかにこの場所に向かっているのは明らかな車の音。

エースは、倉庫内を見回し、隠れられそうな場所を探す。物陰や機材の裏に隠れるのもありかと思ったエースだが、大胆にも倉庫内の鉄柱をよじ登り、上に隠れる選択を取った。

多分、上なら注意して見られる可能性は低いと考えたのだろう。それに、上からならどんな奴が来たか確認もしやすい…。

エースは足場などない鉄柱を、器用に上ると、光が差し込まない場所を探し、その陰に隠れた。

しばらくその場で待つと、何やら鍵穴をいじっているかの様な乾いた音が聞こえてくる。どうやら、今から来る奴等は、鍵を持っている人間ではない様だ。
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