神への挑戦
シンジが部屋から姿を消すまでジンはテレビの画面に視線を送っていた。だがシンジが姿を消すとジンは、テレビのリモコンを取り、テレビの電源を切った。

室内は明かりをつけていなかったので、テレビの光が消えると、闇夜が辺りを包みこみ、静かなものになる。

カーテンは開かれ、軽く雲にかかっている月が窓から見え、ジンはそちらに視線を送っている。

ジンは月が好きだった。太陽を恋しく思っていたはずなのに、いつの間にか月に心を奪われている自分が居たのだ。

月を持てると心が安らかになる気がした。常に冷静な男なのに、安らかになる様な感じがした。

「大丈夫だよゲン…俺はジンだから。そしてお前もジンだ」

呟くように発したこの言葉は、重たい空気があたりを包むこの空間で、最も重たいものだった。

ジンの目指す先にあるもの。

それはこの言葉が表わす意味こそが本質。

ジンが『ジン』という名前に込めた願いこそが、全てを壊し、全てをある方向に導く鍵になる。

ジンは人ではない。

その言葉の本当の意味を知った時、この世界に生きる神達が、戦慄を覚えるのだ。








時間は遡り、ハヤトが目覚める少し前。エースが事務所で何やら準備を始め、ジャックがそんなエースの姿を見て途方に暮れている時。

銀次はハヤトの病室に姿を出す前にあるところに顔を出していた。

銀次の心情としては、ハヤトの容体を確認したかったのだが、どうしても気になる案件があったので、そちらに顔を出す事にしたのだった。

その案件とは、昨日に逮捕されたカツミの件だ。カツミは銀次がおやっさんと呼ぶ刑事に事情を話したあと渡し、それきりだったのだが、おやっさんから直接銀次に連絡が入り、そちらに出向いたのだ。
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