神への挑戦
ゲンの意思か。

「あいつに意思なんてものは存在しないよ。俺が望む事をやっただけなのさ…それがゲンという人間を構成しているものさ。そしてそれも俺が望んでそう仕向けていた。だから俺の指示になるのさ」

対して感情を見せずにそう話すジン。ゲンもまた、義務感だとかそういった感情での行動ではなく、なるべくしてなった展開だと話す。

「ゲンは俺が指定した役柄にちなんだ思考を練るだけで、ゲン個人の考えは持たない。アイツの中にあるのは俺の存在を守る事と、役割を演じ続ける継続力だけなのさ…」

シンジは久しく見たことがなかった。これだけ自分達の事を語るジンの姿を…。

最後に見た姿は、ジャッジタウンを去る前に語った時。デスやレガシーという組織を解散した時以来なのだ。

ジンは感傷に浸っていた。中身の見えない人なのだが、この時はそれを表に見せている様に見える。

「あなたがそう言うのであれば、そうなんでしょうね」

シンジはジンを深くは探ろうとしない。適当に話を切り上げ、それ以上中身に踏み込む事を避けた。

それはジンという闇が、どこまで深いかを知っているから。

右翼や極左とも違う理念を持った存在。

社会の為に動かず、人の為にも動かない。

『理念なき行動』

無欲という名の欲望を持ったジンの考えは、人が理解するにはあまりにも深すぎたのだ。

「総仕上げまではまだ時間があるな。シンジ…休んできなよ」

ジンは自分の向かいの席で、司令をこなす為に睡眠を取っていない側近に声をかける。

「後は俺が指示を出すから。それにマサが現場に居るんだし、そんなに俺らが気張る必要もないしね」

「そうですか…では言葉に甘えて、休ませてもらいますよ」

あえて異論は言わない。ジンという男との会話に否定を用いても意味がないからだ。シンジは持っていた電話を目の前のテーブルに置くと、その場を後にしようとする。
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