【長編】唇に噛みついて
そう言ってフッと笑った。
こいつ……ムカつく。
馬鹿にしやがって、こいつ高校生だよね?
何で年下の男に馬鹿にされなきゃなんないの!?
キッと睨んでいると、そいつはあたしの腕を掴んであたしの耳元に口を寄せた。
「……俺が慰めてやろうか?」
「なっ!!」
顔をバッと見ると、余裕の笑み。
ドキ。
って!何でこいつの笑顔格好いいとか思ってんの!?
あたしはバッとそいつから離れて睨むと、思いっきりビンタしてやった。
パシィン!!
トイレに響く痛そうな音。
あたしはもう一度睨むと、怒鳴った。
「何だか知んないけど。そうやって軽い気持ちで近づいてくる男が1番嫌いなの!!気安く触んないで!」
涙を目に溜めながらあたしは睨みつけると、そそくさとトイレを出た。
そして真弓にも何も言わずにあたしは居酒屋を出た。
怒りのせいで酔いはすっかり冷めてしまった。
ホント最低!
あいつ最低!
平気で女抱けるような奴!嫌いじゃぁ!!!
ま、いいわ。
もう会う事なんてないでしょうから!!
この事はさっさと忘れる!
忘れてやる!!
あたしはズカズカ歩きながら家に帰った。
これが最悪な……狼野郎との出逢いだった。