からっぽな街
どんなに大きなものでも、ここから見ればちっぽけで、それは、目の前の四角いコンクリートの家にも、言えることだと思った。近くのものは大きいのに、遠くのものは、ちっぽけだ。景色の、極一部に見える。
あの大木にぶら下がっている電球も、ここから見れば、大きくぼんやりと光って見える。
周りに光がない分、それが唯一の光のように、辺りに広く広がって、その光に照らされて見える部分が、全て電灯の光に見えて、電球が大きいように見えるだ。
しかし、実際、電球そのものの光源は、五センチにも満たない。ガラスも傷ついて、古くみすぼらしい物で、昼間は、何の主張もしていない。
つまりは、そういうこと。大きく見えても、実際、小さなこともあるのだ。
街だって、街という響きで、広く大きなものに感じるが、実際、家や店、生活に便利なものの集合体に過ぎない。
小さく見えて、大きなもの。大きく見えて、小さなもの。
恐らく、人間にも、そういう部分があると思った。
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