かげろうの殺しかた
加那を屋敷まで送り届け、隼人は立ち並ぶ武家屋敷の間の道を一人歩き続けた。

自分の屋敷に向かう道はとうに通り過ぎていた。


視線の彼方では、ゆらゆらと
水たまりが輝きながら逃げてゆく。


道はいつの間にか両脇に商家が並ぶ大通りになり、凄い勢いで歩いていく隼人を町行く人々が何事かと振り返ってくる。


隼人は走り出した。


汗が滴り、息が切れる。

それでも夢中で逃げる水を追いかけた。



走って、

走って、



道は町を外れ、農家が点在する畑の中を突っ切って延びる街道になった。



足がもつれて倒れ込み、
地面に手をついて一頻り喘いでから、顔を上げて前方を見た。



水たまりはやはり、道の先にあった。

ゆらゆらと。





「畜生──!」





乾いた地面を拳で叩いて、

隼人は触れることのできない
遠い水面(みなも)に向かって叫んだ。
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