隣の先輩
さっきの言葉はできませんと宣言しているようなものだった。


「勘だけど」


 そこで先輩は言葉を切る。


「まあ、料理なんてすぐにできるようになると思うよ」



 そう先輩は優しく告げていた。


 さっきとのギャップだろう。その彼の言葉がなんだか恥ずかしくて、ただうなずくことしかできなかった。


 連休明けの一日目、先輩と行くときに偶然会う。先輩は鞄の中から紙袋を出してくれた。


「母さんがお土産だって。いらなかったら他の人にあげていいから」


 そこに入っていたのはブルーベリーキャンディ。たまたま顔を合わせたから、気を使って買ってきてくれたのだろう。


 ちょっと悪いとは思いながらも、うれしい気がした。


「ありがとう。大事に食べます」


 私の言葉に先輩は笑顔を浮かべていた。

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