隣の先輩
 彼は何度か言葉を飲み込んだが、しばらく経って口を開く。


「前原さんって彼氏いるの?」


 もう何回目だと言いたくなるほど、聞きなれた言葉だった。


「いないと思うよ」


 でも、彼にとって、そう聞いたのは初めてで、彼なりに考えて聞いてきたわけで、そう考えると邪険に扱うことはできなかった。


 私が第一印象で可愛いと思った咲は、異性からもそれなりに人気があった。


 おかげで彼女の好みのタイプとか、彼氏の有無を私に聞いてくる人がやけに多かった。


 愛理に聞かないのは、彼女は本人に聞けと一蹴してしまうからだ。


 かといって、本人は男とはほとんど話をしようとしないので、聞くと避けられそうな気がしたんだろう。

< 186 / 671 >

この作品をシェア

pagetop