隣の先輩
 彼女の耳にはピアスの穴が空いているように見えなかった。


 私は他のペンを数本拾うと、宮脇先輩に差し出した。


「ありがとう」


 彼女は小声で囁く。


「先輩、ピアスって」


 誰かからの預かり物だろうか。


「これは、人からもらったの」


 そう言うと、宮脇先輩は幸せそうだけど、どこか寂しそうな笑顔を浮かべていた。


 ピアス穴の空いていない彼女に誰がそんなものを送ったんだろう。


 私のそんな気持ちに気づいたのだろう。宮脇先輩は囁くように言った。


「昔、好きだった人にもらったの」

「彼氏ですか?」


 彼女は少し考えると、首を横に振る。

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