隣の先輩
 でも、先輩は本当にいつもどおりだった。

 あのとき、話を盗み聞きしなかったら、そんな約束をしていたなんて絶対に気づかない。


 昔の彼女にあんな形でデートに誘われたら、嬉しいんだろうか。


 いつもと変わらない表情を浮かべている先輩が今、何を考えているのかただ知りたかった。




 和葉さんからはお土産をもらった。


 日帰りで友達とどこかに出かけていたらしい。


 よく考えると、私と和葉さんは面識があるんだから、先輩を待っておく必要がどこにもなかったんだってことにそのとき気づく。



 二人の約束を知らなければよかったのかもしれない。
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