隣の先輩
 笛が鳴り、試合が再開された。


 私は立ち上がると、宮脇先輩を見る。彼女は指先をじっと見ていた。


「宮脇先輩」

「どうかした?」


 そう言うと、私を見て、笑顔を浮かべている。


「さっきはボーっとしていてごめんなさい」


「いいのよ。顔に当たらなくてよかった。怪我したら大変だもん」


 そう言うとまた優しく笑っていた。


 私の顔なんて少々ボールがぶつかっても大丈夫なのに。


 やっぱり彼女はすごく素敵な人だから。


 すごく大人びていて、穏やかで、こんなこともたいしたことがないというように笑顔を浮かべている。


 西原先輩がどうして彼女とつきあったのか、分かる気がする。


「じゃ、私、ちょっと向こうに行くから」


 彼女は何かを思い出したようにそう告げる。


 そして、体育館から出て行ってしまった。


 私は彼女の姿を見送ると、今度はボーっとしないように愛理のチームの応援をすることにした。
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