隣の先輩

 そんなことを私が咎める権利がないことくらい分かっている。


 それでも、胸が痛い。


「そっか。悪いな」


 静かな空間に、感情を抑えた男の人の低い声が響く。



 そう言うと、その人は廊下を歩いていく。


 私は階段の影に隠れると、そんな姿を見送っていた。


 昼休みに人通りの少ない教室の前を歩いていたら、人の話し声が聞こえたのだ。


 でも、図書館の途中に通る道だからと気にせずに歩いていたら、途中で、それが告白だったことに気づいた。


 引き返そうとする前に、宮脇先輩の姿を確認していた。


 告白をしているのは多分、宮脇先輩と同じクラスの三年生。


 何度か見たことがあるから。


 彼の足音が消えるのを確認して、息を吐く。昼休みがあまり残りがないことを思い出し、廊下に出る。


 でも、私の足元に影が現れていた。


 顔をあげると、そこには宮脇先輩が立っていた。彼女は驚いたように目を見開いている。
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