隣の先輩
 愛理はこういうことをさらっと言えるのがほんとうにすごいなと思う。


 先輩は祖父母の家に行くのかな。


 でも、受験前だし、和葉さんも、先輩のお父さんもそういうことを強制するようなタイプには見えなかった。


 もうすぐ先輩の誕生日。


 大晦日の朝にメールか何かで伝えようかと思ったけど、今は正直迷っていた。


 口も利いていない私がそんなものを送ったら迷惑かもしれないと思ったからだ。


 終業式が終わり、教室に戻る途中、見慣れた姿を見つける。


 先輩は依田先輩と一緒にいて、笑顔で何か話をしていた。


 そんな笑顔を見ていると、先輩にとって私はたいした存在ではなかったんだろうなという気がした。


「お兄ちゃん」


 突然、私の隣にいた愛理がそう声をかけた。



 依田先輩と、先輩が振り向く。


 西原先輩の視線が私に向けられるのが分かった。


 そんなことにドキドキして、胸が苦しくなる。


「用事があるから先にいくね」
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