隣の先輩

 帰りながら、先輩が依田先輩に見せたような笑顔をどうにかして見せてくれないかなと考えていた。


 クラスメイトの彼が見せてくれたみたいな屈託のない笑顔。


 でも、そのための方法がさっぱり分からなかった。


「明日は」


「もう大丈夫です。道はばっちり覚えました」


 いくら分からなくても、三回くらい行けば、道も覚えるようになる。


 今のところ、それくらいしか接点がないことは分かっている。


 それを自ら切ってしまうのは心が痛いけど、分からないと嘘を吐いて甘えるのはもっと嫌だったからだ。


「じゃあな」


 明日という言葉が聞けないのは、もう一緒に学校に行かないからだと思う。


 そう考えると胸の奥が針で刺されたようにちくりと痛んだ。


「ありがとうございました」


 そう言うと、家の中に入ることにした。
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