隣の先輩
「別に思わないよ」


 咲はそう言うと、笑顔を浮かべていた。


「だって、今の状況で告白するのって、どうなのかなって思うから。相手に余計な気を遣わせたくないんだよね。友達か分からないけど、気軽に話せる相手でいたいから」


「そうだけど、告白したらつきあってくれるとか」


「多分、彼の性格を考えたらそれはないよ。自分の好きになった人としかつきあわないと思う。どんなに親しい人から言われてもね。彼が私のことを好きでないのはわかっているから」


 その咲の好きな人はすごくまっすぐな人なんだ、と思った。


 咲は彼のことをよく理解しているんだって分かる。


 今でも、それが誰のことなのかは分からない。


「私はこんな性格だから、真由に告白しろとは言えないんだよね。自分からチャンスを逃していると言われても、やっぱりね。でも、真由は先輩の好きな人って誰か知らないわけでしょう。

もし、先輩の好きな人が真由だったりしたら、それを十年後とかに聞かされたら後悔しない?」


 そんなことありえないと思うけど、確かにそうだ。


 昔は好きだったなんて言われたら、泣いてしまいそうになる。


「確かにそうだね」


「私とは違って可能性があるんだから、それとなく触れてみたらいいんじゃない?」


 そう咲は笑顔で言っていた。


 咲とこういう話をするたびに、ますますその相手が気になってくる。


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