隣の先輩
「分かった」

「浮気はしないでください」

「絶対にしないよ」

「夏休みとか帰って来ますか?」

「約束じゃなくて、質問になっているよ」


 私はそんなことを言われて、言葉につまる。


 先輩は私を見て、目を細めていた。


「でも、お前に会うために帰ってくるよ」


 先輩から言われた言葉が嬉しくて、何度もうなずいていた。


 先輩がどんなに嬉しい言葉を向けてくれても、寂しさをゼロにすることはできないけど、半分くらいまでは寂しさが吹き飛んでしまっていた。



「先輩のことが大好き」


 私は嬉しくなってそう言葉をもらす。


 先輩は私がそんなことを言い出すとは思わなかったのか、顔を背けてしまった。そんな先輩の口から言葉がこぼれる。


「俺も同じだから」


 好きと言ってほしかったけど、今は外だし、これでも満足だった。


 先輩にとっては最大限努力してくれたんだろうから。


 いつも私が辛いときは気づいてくれた先輩の優しさは、今でも全く変わらないね。


 そんな先輩だから、信じられると思う。


 先輩は私との約束を守ってくれたから。


「ありがとう」


 私は笑顔でそう言うと、先輩に絡ませていた指を外す。


 夜空に長い年月、明るい光を放ち続ける星のように、そんな先輩の優しさも、私の気持ちも、そして、願わくば先輩の気持ちも変わらないでいてくれたらいいなと思う。
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