隣の先輩
 駅を出ると、私は先輩に消された携帯の電源を入れる。しばらく経って携帯にメールが届く。


 送信者は先輩で、送信時刻は私がさっき先輩と一緒にいた時間だった。


 そういえば、先輩はあのとき携帯を触っていた気がする。



 私にわざわざメールを送ってくれたんだ。口で言ってくれればよかったのに。



 そう思いながらも、先輩が送ってくれたメールの文面を確認する。





 真由との約束は必ず守るよ。これは真由に約束してほしいことというか、俺からの命令。嫌とは言わせないから。




 夜中でも、授業中でもいつでも、真由が寂しいときとか、悩みごととかがあったときはいつでも話を聞いてやるから、いつでも電話をしてきていいから。絶対に一人では泣かないでほしい。


 これからは今までと違って傍にいてやれないこともあるけど、会いたいときはそう言ってくれれば、できるだけ戻ってくるようにするから。


 他の人には気を遣ってもいいけど、俺にだけは気を遣わなくていいし、強がらなくていい。不満があったら言ってくれていいから。



 こんな気の利かないことしか言えなくてごめん。


 でも、誰よりも大切に思っているから。


 夏休みに帰ってきたときにはいっぱい遊んでやるから、その分しっかりと勉強をしておけよ。



 その文面を見て、目頭が熱くなる。



 先輩がずっと私に向けてくれていた優しさだった。同時に顔がにやけるのが分かった。


 人前だから、慌てて頬を抓った。


 嬉しい。


 いつも先輩はそうだった。私のためにいろいろしてくれた。


 遠回りもしたけど、だからこそ先輩の優しさをいっぱい感じれたのかもしれない。


 私はいつの間にかメールの文面が霞んでいるのに気づき、目元を拭った。


 大好きだよ。先輩。


 私はその気持ちをメールで打つと、先輩に送っていた。
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