隣の先輩
 佳織さんは頻繁にメールを送ってくれる。その中には先輩の写真が添付されていたりすることもある。


 あれだけ写真が嫌いだった先輩が「真由ちゃんに送ってあげるから」というと渋々承諾することがなんだかおかしいみたい。




 でも、そうしてくれるのは私のためなんだって分かる。


 やっぱり先輩は自分の顔が映るのは嫌いみたいで、時折隠し撮りのような角度になってしまっているのが、なんだか微笑ましくて、そのときのことを想像すると笑ってしまった。


 先輩は遊ばれているんだろう。


 先輩はいつ帰って来るんだろう。


 私にまだその話はしてくれない。


 もう少し向こうに残る気なんだろう。


 花火大会までまだ日数がある。でも、その日々がいつもより長く感じた。



 私は無性に先輩が恋しくなって、先輩が買ってくれたネックレスを鞄から取り出した。


 本当は学校で見つかったら没収だけど、夏休み期間中は所持品検査なんかもないので、比較的自由だった。


 その銀色のチェーンの先に結ばれた赤い宝石は太陽の光を受け、より鮮やかに輝いていた。


 私はそれを見て、表情を緩める。


 泣かなかったのは先輩の思い出や、佳織さんがいたからということもあった。
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